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私は、子ども時代のほとんどをスモーランドの森の中で過ごしました。
それはとても素朴な生活で、電気もお湯もトイレも電話もテレビもなく、周りには同世代の子どもたちもいませんでした。
私はよく退屈して、ほとんどひとりぼっちでしたが、幸運なことに本に夢中になることができました。
それがあなたの本だったのです。

あなたは、私が自分の存在理由について考えるきっかけをくれた初めての人でした。

この世には悪と善が存在すること、死からは逃れられないということ、許しは与えられること、でも人生において信仰は最も強い力を持つこと。
そんなことをあなたは教えてくれました。

あなたは私を形作った人です。でも、それなら何があなたを形作ったのでしょうか?

とても若かった頃、あなたを決定的に変えた何かが起きて、あなたをこんなにも素晴らしい作家にしたのでしょう。

それは、あなたに子どもの魂を理解する鋭い洞察力を与えた何か。

それは、あなたに当時の社会規範や宗教、文化を打ち壊させた何か。

そして、それはあなたを私たちの時代で最も革新的で影響力のある芸術家の1人たらしめた何か。

その出来事が、私の物語『リンドグレーン』を生み出したのです。

感謝を込めて。
ペアネレ・フェシャー・クリステンセン
母国スウェーデンのみならず日本を含め世界中で愛され、読み継がれている児童文学作家、アストリッド・リンドグレーン。数々の著作は、全世界100か国以上で翻訳され、多くの子どもたちに本の世界への扉を開き、その後の人生や価値観に大いなる影響を与え続けてきた。「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」「やかまし村の子どもたち」シリーズをはじめ、すべてが代表作と呼べるほど有名な作品ばかりだが、どの作品においても、やんちゃな子どもたちが本から飛び出さんばかりの勢いで暴れまわる、生命力に満ちた豊かな世界観に魅せられる。彼らはみな大人顔負けの意志の強さを持ち、子どもならではの自由な発想力で、世界中の読者を夢中にさせてきた。
リンドグレーンという名に、いつしか親しみを覚えてきた私たちは、著作に登場する元気いっぱいのキャラクターに、どこかで彼女自身を重ねてきた節もある。スウェーデンでは紙幣になるほどの存在だが、実のところこの作家が、どんな人物だったのか、どんな人生を送ったのか、その創造の源を、北欧圏以外で詳しく知る人は少ないだろう。
本作が描き出すのは、リンドグレーンの16歳から10年に満たない、だが彼女の人生で最も激動といえる若かりし日々。兄弟姉妹とスモーランド地方の自然の中で伸び伸びと育ったアストリッドは、思春期を迎え、より広い世界や社会へ目が向きはじめる。教会の土地で農業を営む信仰に厚い家庭で育ちながら、“率直で自由奔放”な彼女は、次第に教会の教えや倫理観、保守的な田舎のしきたりや男女の扱いの違いに、息苦しさを覚え始めていた。そんな折、文才を見込まれ、地方新聞社で働き始めた彼女は、才能を開花させはじめる。しかしその矢先、アストリッドの人生は、予期せぬ方向へと進んでいく――。
なぜ、アストリッドは最も革新的で影響力のある稀有な作家になり得たのか、なぜいつまでも子どもの心を忘れず、理解できるのか――そのすべての答えが、ここにある。
監督・脚本は、長編監督デビュー作『A SOAP』(06)が、いきなりベルリン国際映画祭で銀熊賞、及び最優秀新人作品賞に輝いた、ペアニレ・フィシャー・クリステンセン。監督と共同で脚本を手掛けたのは、絵本「おじいちゃんがおばけになったわけ」が有名なデンマークを代表する作家の一人、キム・フォップス・オーカソン。
アストリッド役を生き生きと演じるのは、巨匠ビレ・アウグスト監督の娘、新星アルバ・アウグスト。本作の演技が高く評価され、ヨーロピアン・フィルム・プロモーション審査員賞の新人賞にノミネートされ、一躍注目の女優になった。アストリッドの母親役には、『ヴェラの祈り』(14)や『真夜中のゆりかご』(15)などで日本でも馴染みの深いデンマーク出身の名女優マリア・ボネヴィー。そして、慈愛に満ちた里親マリーを演じるのは、スサンネ・ビアの『未来を生きる君たちへ』(11)などで日本でも知られるデンマーク出身のトリーネ・ディアホム。アストリッドの運命を大きく変えた編集長ブロムベルイには、数々の男優賞に輝き、近年では『テルマ』(18)などで存在感を示すヘンリク・ラファエルセン。その他、スウェーデン、デンマークを中心に北欧の才能が集まり、アストリッド・リンドグレーンの知られざる半生と名作誕生のルーツに迫った感動作が誕生した。
1993年6月6日生まれ。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したデンマークの映画監督ビレ・アウグストとスウェーデンの女優・映画監督のペルニラ・アウグストの娘。2013年、ウィリアム・オルソン監督の『RELIANCE』で主役を演じブレイク、高い評価を受ける。2018年から、北欧初となるNetflixオリジナルシリーズ『ザ・レイン』にも出演している。本作『リンドグレーン』の演技で、ヨーロピアン・フィルム・プロモーション審査員賞の新人賞にノミネートされた。批評家からは「直観と好奇心に満ちあふれたアルバは、アストリッド・リンドグレーンの若き日々を豊かに描いた『リンドグレーン』で、実在の作家の説得力ある人物像を実現し、審査員の心を掴んだ。」と高く評価されている。
1973年9月26日、スウェーデン、ヴェステロース生まれ。スカンジナビア半島の映画・演劇界において数多くの印象的な役を演じ注目される女優の1人。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したビレ・アウグスト監督の『エルサレム』(1996)では主役を演じた。
1967年1月10日、スウェーデン、ノーショーピング生まれ。俳優、マジシャン、ダンサー。主な出演作に、『ミレニアム2 火と戯れる女』(2010)や『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(2010)、マイケル・ノアー監督の『氷の季節』(東京国際映画祭2018)などがある。
1972年4月15日、デンマーク、オーデンセ生まれ。デンマークを代表する女優の1人で、シンガーソングライター、映画監督としても活躍。アカデミー外国映画賞を受賞した『未来を生きる君たちへ』(2011)での母親役を皮切りに国際的に名前を知られるようになり、トマス・ヴィンターベア監督の『THE COMMUNE』(2016)では、第66回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。
1973年、ノルウェー、クリスチャンサン生まれ。主役を演じた『THE ALMOST MAN』(2012)では、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞し、トロンハイム国際映画祭で最優秀主演男優賞にノミネートされている。その他の出演作に、ヨアキム・トリアー監督の『テルマ』(2018)などがある。
1969年12月24日、デンマーク、コペンハーゲン生まれ。デンマークで最も成功した監督の1人。長編監督デビュー作の『A SOAP』(2006)は、第56回ベルリン国際映画祭でプレミア上映され、銀熊賞と最優秀新人作品賞に輝いた。その他にも『A FAMILY』(2010)では第60回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、『愛する人へ』(トーキョーノーザンライツフェスティバル2016)は同映画祭のベルリナーレ・スペシャル・ガラで上映された。本作が5本目の長編監督作となる。
1958年9月12日、デンマーク、コペンハーゲン生まれ。デンマークを代表する作家の1人で、これまでにも数多くの賞に輝いている。手掛けた作品はコミックや絵本、短編のシリーズから小説までと幅広く、その数は100作以上に上り、日本でも絵本「おじいちゃんがおばけになったわけ」など翻訳が出版されている。90年代半ば以降は長編映画の脚本執筆に注力し、ペアニレ・フィシャー・クリステンセン監督作の『A SOAP』(2006)、オーレ・クリスチャン・マセン監督作『プラハ』(トーキョーノーザンライツフェスティバル2018)などの脚本を手掛けた。